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2016.09.28

初期償却についての取り扱いが自治体によって異なる問題(後編)

前回に引き続いての後編は、各自治体の対応について具体的に見ていきたいと思います。

絶対✕の埼玉県、「不適合」扱いながら実質OKの東京都

前編の最後にも例としてご紹介しましたが…

・同じ会社が運営する同じ介護付有料老人ホームなのに、東京都大田区に来月開設するホームは「初期償却アリ」、埼玉県川口市に2年前にオープンしたホームは「初期償却ナシ」でした。初期償却の取り扱いが自治体によって異なることで、このような事態が生まれています。

一都三県の「初期償却」の取り扱いは現状、以下のようになっています。

(東京都)

初期償却は実質OK。初期償却を取るホームは、東京都有料老人ホーム設置運営指導指針との適合表で「不適合」が付きますが、これは改善を事業者に義務付けるものではなく、罰則もありません。「初期償却は取らない方が望ましい…」という意思表示というニュアンスでしょうか。

東京都有料老人ホーム設置運営指導指針との適合表
東京都有料老人ホーム設置運営指導指針との適合表

事業者によっては都のそういった意向を汲んで初期償却を廃止したところもありますが、現状は取っているところが多くなっています。

なお開設予定ホームの料金表にも初期償却が記載されていることから、「初期償却ナシ」が有料老人ホーム設置届受理の条件ということでもなさそうです。

(神奈川県&千葉県)

OK。明確な算定根拠を提示することを条件に初期償却は取っても良い。但し必ず「入居金ゼロ円プラン」も料金表に併設することが条件。

(埼玉県)

初期償却は理由の如何を問わず一切認めない姿勢です。一都三県では一番厳しいと言ってよいでしょう。但し既存ホームの初期償却はOKとしており、法改正以前に開設されたホームについては現在も初期償却を徴収しているホームがあります。

初期償却は悪?

入居時の前払金のうち一定の割合を入居時に「償却」(=返還しない)してしまう初期償却は確かに悪者扱いされやすいのですが、決してそうとばかりは言い切れない側面があります。

前回の「前編」でも例示しましたが…

60か月分の家賃を前払い→初期償却がナシの場合、30か月経過時点で退去したときに残りの30か月分は返還される。(はい、わかりやすいですね)

ということは…

60か月分の家賃を前払い→入居後60か月が経過し、61か月目を迎えた。(家賃は60か月分しか払っていない。今までの月額費用にこれからは家賃相当分が上乗せされる?!)

ということになりますよね。

初期償却は、想定居住期間内で退去したときに未償却分の一部が返還されないというリスクを入居者側に負わせることを条件に、「想定居住期間以上に長生きしたときの費用リスクを事業者が負うための制度」ともいえるのです。

ご参考までに…

現状では初期償却を取っていないホームで、想定居住期間を超えた場合に以降の家賃負担を求めるホームは、ほとんどありません。

この場合「想定居住期間内で退去しても、想定居住期間を超えて契約が継続しても入居者側は損をしない」ということになります。

まとめ

前後編の2回に分けてお届けいたしましたが、まとめますと以下のとおりです。

・都県によって「初期償却」の取り扱いが異なります。

・入居する側からみると初期償却はない方が有利ですが、想定居住期間(=償却期間)を超えて契約が継続した場合の費用負担については確認が必要です。

・埼玉県内の有料老人ホームは初期償却がありません!…が法改正以前の開設ホームでは今も初期償却を徴収することが認められています。

・東京都、千葉県、神奈川県では初期償却は大半のホームが徴収しています。よって初期償却率と償却期間の確認が必須です。

入居金(前払金)はどなたも必ず最初にチェックすると思いますが、初期償却の有無や償却期間、償却期間経過後の費用負担について…などにはなかなか気が回らないものです。

くれぐれもどうぞ慎重に、ご検討されることをお勧めいたします。