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2016.09.26

初期償却についての取り扱いが自治体によって異なる問題(前編)

入居時に前払金を必要とする有料老人ホームにおいて、前払金の一部(または全部)をホーム側の「売上計上分」として返還の対象としないことを「(前払金の)初期償却」といいます。

前払金480万円・初期償却率30%のホームであれば、144万円は返還されないということです。結構大きい金額になりますね。

老人福祉法の改正

この「初期償却」は消費者保護の観点から問題視され、老人福祉法の改正につながりました。同法の29条6項にはこうあります。

「有料老人ホームの設置者は、家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除くほか、権利金その他の金品を受領してはならない。」

「権利金その他の金品を受領してはならない」とありますね。法改正以前の入居時費用は、「家賃の○○か月分の前払い分+権利金」から成っていて、入居期間の長短を問わず権利金相当分は返還しない(=初期償却)とするところが多かったのですが、これが法改正によって禁止されたのです。

老人福祉法29条
老人福祉法の29条は有料老人ホームに関する条文となっています。

 

初期償却はなくなった?

…では、「初期償却」は禁止されたのでしょうか。実はそうではありません。今も初期償却は存在しています。権利金その他の金品として受領することができなくなりましたので、その名目は以下のように説明されています。

「想定居住期間を超えて契約が継続した場合に備えて、事業者が受領する額」

権利金その他の金品が受領できない以上、入居時の費用は0円とするか、「家賃の○○か月分を前払金または敷金として徴収」するほかはありません。想定居住期間※を60か月(5年)と設定しているホームであれば、家賃の60か月分を前払い家賃として受領、30か月経過時に退去した場合は、残った30か月分の家賃を全額返還することとなります。

入居者のうち概ね50%の方がその住まいに入居し続けることが予想される期間のことで、ホームによって当然ながら異なります。

但し、家賃の前払い分はこの例の場合60か月分ですから、61か月目以降、契約が継続した場合は家賃をあらためて受領しないと事業者側は「合わない」ということになりますね。

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しかし入居者側は、想定居住期間を経過した時点で改めてまとまった額の前払い家賃を負担したり、家賃相当分を今までの月額料金に上乗せして毎月支払うのは厳しい…という方が大半です。

そこで、有料老人ホーム側は想定居住期間を超えても入居者から家賃(または数か月~数十か月分の前払い家賃)を徴収しない代わりに、想定居住期間内で退去した方から入居金の一部を「初期償却」することで補うという手法が生まれたのです。

この手法をアリとするかナシとするかが自治体によって異なるというのが今回のテーマだったのですが背景の説明が長くなってしまいましたので次回「後編」でその実情をご紹介いたします。