介護付有料老人ホームにおける「車いす」問題
介護付有料老人ホームへ見学同行で訪問した際に、入居後に車いすが必要になったときのことについてお伺いすると、「介護付有料老人ホームですから一般的な車いすであればホーム負担で無償貸与します」という運営会社さんがある一方、「介護付有料老人ホームですから」までは同じですが、「介護保険の福祉用具レンタルが使えないので、ご本人またはご家族様負担で購入または自費レンタルをお願いしています」と回答する運営会社さんもあります。
それぞれ理由は「介護付有料老人ホームですから」なんですが、その後の回答内容が180度変わるのです。どちらかが不適切な回答をしているのでしょうか。実はそうではありません。
老企52号通知
旧厚生省時代の平成12年3月31日付で、当時の「厚生省老人保健福祉局企画課長通知」52号という文書がそれぞれの根拠となっているのですが、同通知では介護付有料老人ホームについて「適時、適切に介護サービスが包括的に提供されるもの」であり、「個々の利用者ごとに設定されるものではなく」「要介護度状態区分又は要支援の区分に応じて一律とし」これを前提に報酬額を設定しているので利用料のほかに別途費用を徴収することはできないとしています。
要は
・ひっくるめでサービス提供されるものなので
・個々の入居者の身体状況によらず
・要介護度に応じて一律の料金設定
で、別途費用を取らないでね、と言っているわけです。
一方、この通知には後半に「個別性の高いサービス」については例外的に保険給付対象外の費用を徴収しても良いと記載されています。
例として「個別的な目的の外出」や「個別的な買い物」「標準的な回数を超えた入浴介助」が挙げられていますが、これによらず、原則は包括的(ひっくるめ)にサービス提供することになっているんだから「これくらい個別性の高いサービスでないと、認められないよ」と言っているのです。「足が不自由で車いすを利用しないと移動ができない」が上記例と同じくらい個別性が高いかどうか、通知文書では触れられていないのです。
一般的な車いすまではひっくるめに含め、特殊な機能の付いた車いすの貸与については「個別」とするのか、車いすの貸与自体を「個別的なサービス」と見るのか、通知の解釈に隔たりがあるのもわからなくはありません。
「通知」は「法律」ではない
この通知文書は、有料老人ホーム事業者がサービスを提供するにあたっての指針として業界でももちろん尊重されていますが、罰則を伴う法令ではなく運営基準の考え方を示したもので、この通知文書の範囲内である程度の裁量・運用の余地が残されているもの、と考えれば冒頭に挙げた二つの回答はどちらも「間違っていない」ということになります。
…ということは、介護付有料老人ホームを見学に行くとき必ずしておくべき質問が一つ見つかったことになります。
入居後の車いすの取り扱いは必ず確認すること
「入居後に車いすが必要になった場合、どのような対応になりますか」というものです。
今すでに車いすを使っている方のご見学であれば、「いま借りているこの車いす、ホームに入った後もそのまま使えるのかな」は普通に頭に浮かぶ疑問でしょうが、足はまだピンピン、歩けるどころか走れちゃいます!くらいの方からすれば、入居して数年後に車いすを使うことになるかもしれない…なんてことは想像もしづらいのではないでしょうか。質問されなければホームの相談員さんも答えないでしょうから、結局数年後、いざというときになって「車いすに別途費用がかかるなんて見学のときに聞いていない!」なんてことになるわけです。
ウィルホームコンサルプラザでは介護付有料老人ホームの見学時、入居を検討している対象者の方が現在車いすを使っているかどうかを問わず、この質問を忘れずにするようにしています。
なお住宅型有料老人ホームでは
一方、住宅型有料老人ホームや「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていない一般的なサービス付き高齢者向け住宅の場合は、車いすをはじめとする福祉用具は、在宅のときと同じく介護保険の福祉用具貸与サービスが利用できます。
いま利用している方であればそのまま使い続ければよく、入居後に福祉用具が必要になられた際は、介護保険を使ってレンタルが利用できます。
今回の話は「介護付」有料老人ホームに入居したときの話です。
ご見学の際の参考になさってください。


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