有料老人ホーム紹介センターは利益のみを追求すべきか問題 | 有料老人ホーム、高齢者・シニア向け住宅を探すなら、紹介センターウィルホームコンサルプラザ


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ウィルホームコンサルプラザのブログ

2021.04.15

有料老人ホーム紹介センターは利益のみを追求すべきか問題

「べきか問題」と題したシリーズ、今回は少し目線を変えて業界としての「有料老人ホーム紹介センター」(以下、紹介センター)について考えてみたいと思います。

少し長くなりましたが、どうぞご一読ください。

 

紹介手数料ありきのビジネスモデル

紹介センターの多くは、有料老人ホーム運営事業者(以下、運営事業者)と個別に「業務委託契約書」を締結、紹介案件が成約に至った場合の成功報酬として「紹介手数料」を受領するビジネスモデルとなっています。この契約書の中で、紹介が成立するための条件や成約ごとの紹介手数料額などを定めています。

紹介手数料額にはいわゆる「相場」があるにはありますが、あくまでも個々の契約で定めているものです。

紹介センターから見ると運営事業者A社とB社では成約に至ったときの紹介手数料額が違いますから、手数料額の低いA社のホームは紹介せず、高額な手数料のB社を(さりげなく、ですが強めに)提案しようとする紹介センターがあっても不思議ではありません。
また同じ運営事業者のホームを紹介するときも、入居が順調に進んでいて空室わずかのaホームより、入居率が低く空室の多いbホームに紹介したほうが手数料が高いということもあります。

その差が僅かであればともかく、たとえば倍違うとなればどうでしょう。皆さんが紹介センターの相談員だったら、aホームではなく、なんとしてもbホームに誘導しようとしたくなりませんか。

運営事業者からの紹介手数料ありきというビジネスモデルは、相談者からは費用をいただくことなく無料でご相談を承ることができるというメリットがありますが、紹介手数料の多寡に紹介センターからの提案ホームが左右される(可能性がある)という大きな問題をはらんでいるようにも思うのです。

 

契約未締結のホームは紹介できない

以前は紹介センターから契約締結の話があれば、よほど「怪しい」ところでなければ契約を締結していた運営事業者も、首都圏だけで100社を超える紹介センターができた今は、契約書の管理が煩雑になることもあって新規の契約を控えるところが多くなってきました。また運営事業者による紹介センターへの実績評価も行われるようになり、一年または半年単位での成約実績件数が運営会社の定める基準に満たない紹介センターには手数料を減額したり、契約を打ち切るところも出てきました。

現在は相談員2名体制となりましたが、相談員1名体制の時期が長かった私たちウィルホームコンサルプラザでも、実は成約件数が少ないからと契約を切られてしまった運営事業者が数件ですがあります。支部や拠点を多く持ち、相談員数が多い紹介センターでは、一人ひとりの成約件数は多くなくても全体の合計で成約件数を足し算できるので良いのですが、相談員数の少ない私たちのような紹介センターでは数を求められると厳しいですね。

契約がないのですから、その運営事業者のホームに紹介しても手数料は一円も入らないということになります。

 

相談者の意向より優先されるもの

このような背景のある中、紹介センターの中には残念ながら自社の利益追求を優先するあまり、相談者のご意向が結果としてナイガシロにされてしまうこともあります。

◎紹介手数料の高額なホームへ誘導

紹介手数料が低額なホームは提案先から外したり、「評判が良くない」「現在満室で待機多数」「館内の雰囲気が相談者の意向とは合わない」などと理由を付けて優先的には紹介しないということになります。

→費用や立地、サービス内容がより希望条件に近いホームが他にもあったのに、紹介手数料が低額だったり、その紹介センターが提携していないホームだったことで紹介してもらえなかった。

◎見学には同行しない

見学に同行するかどうかは紹介手数料に関係がありません。同行したら「+〇万円」なんてことはないわけです。逆に見学に同行すると交通費がかかりますし、同行している間は別の相談業務を承ることもできません。見学に同行しなければ経費と時間が削減できます。

→紹介センター相談員が同席しなかったことで、聞くべきこと確認しておくべきことが漏れてしまい、入居後に「聞いてなかった、○○が別料金だったことが確認できなかった」などのトラブルになる例も。「言った言わない問題」も起きがちです。

◎紹介手数料対象外の仕事はしない

ショートステイ(数日から数週間程度の短期滞在サービス)の利用相談やグループホームなど紹介手数料対象外施設の入居相談は受けてもお金になりません。有料老人ホームなど手数料が発生する紹介先に誘導するか、「ウチでは承っておりません」と相談を受けないことで「無駄な仕事」に時間がとられることを防ぎます。もちろん、契約を結んでいない運営会社のホームは紹介しません。

→グループホームの相談も承ると聞いていたのに実際紹介センターに面談に伺ったら有料老人ホームばかりを提案され、逆にグループホームのことは個々のホームの情報も不足していて質問しても適切な回答がもらえなかった。将来的な相談と事前に伝えていたのに、入居を急かすような話になった…という例もあるようです。

 

ウィルホームコンサルプラザの「立ち位置」

上記のように紹介センターが利益追求にばかり走ってしまうと、相談者の意向は無視されてしまうこともあります。

ウィルホームコンサルプラザでは、前述の「契約を切られた」先へのご紹介も引き続きさせていただいておりますし、ショートステイやグループホームへの利用・入居相談も承っています。もちろん、相談者様宅への訪問面談や見学同行も有料老人ホームのときと全く変わらずお受けしています。

なぜだと思いますか。

実は「お金にならない」仕事ではないことを知っているからです。私たちのご相談案件の紹介元はほとんどがケアマネジャーさんからです。彼ら彼女らの事業所にホームについての相談が入ったときに「ウィルホームコンサルプラザさんという紹介センターがあるから相談してみては」と紹介していただくことで私たちは相談を承ることができるわけです。

そのような経緯でウィルホームコンサルプラザにたどり着いたご相談者様なのに、私たちウィルホームコンサルプラザが自身の都合だけを考えて不適切な仕事をしたら、私たちがお叱りを受けるのは自業自得でしょうが、ご相談者様はきっと、紹介元であるケアマネジャーさんにも苦情を入れるでしょう。「とんでもないところを紹介してくれたな」と。

逆に私たちがきちんとご相談を承ることができれば、ケアマネジャーさんにも「いいところを紹介してくれてありがとう」…となるのではないかと思います。

その時その案件では確かに「お金にならない」かもしれませんが、丁寧にご相談を承ることによってケアマネジャーさんは「次に何か案件があったらウィルホームコンサルプラザに相談してみよう」となりませんか。なるんです。実際そのようにして私たちはウィルホームコンサルプラザの「ファン」を増やしてきました。

「高齢者ホームのプロ」を自称する紹介センターの中には、手数料の対象外であるグループホームや特別養護老人ホーム(特養)について、足を運んだことすらない方がたくさんおられます。

グループホームや特養と有料老人ホームを比較して、より条件に合うところを探しておられる方からのご相談に対して、訪問したことのないグループホームや特養と有料老人ホームの違いを適切に説明できるでしょうか。

 

今回の「べきか問題」の私たちの回答

利益のみを追求するべきではないと考えます。有料老人ホームなど高齢者施設の入居相談は、結婚相談や資産運用相談、保険相談などのほかの相談系業務と違い、ご本人ではなく息子さん・娘さんなどご家族からの案件が多く、また「本当は本人も家族も望んでいるわけではないけれど…」という後ろ向きな検討も多いのが特徴です。また必要に迫られて検討されるまでは「全く興味も関心もなかった」という方がほとんどだと思います。

そんな「右も左もわからない」相談者が、病院の退院時期など切羽詰まった事情の中で相談に来られるというのは、紹介センター側にとってみれば「御しやすく、自社にとって都合の良い提案も言いくるめやすい」状況ともいえるのではないでしょうか。

こういった背景を踏まえ、私たち紹介センターはあらためて襟を正し、真摯に相談に向き合うべきだと思うのです。

 

紹介センターの「これから」

昨年から、紹介センター業界では「高齢者住まい紹介事業者届出公表制度」がスタートしています。玉石混淆でしかも外からは玉なのか石なのかの区別がつきづらかった私たちの業界が透明化を推進するための第一歩となったわけですが、この制度は運営会社の団体である高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)が主導して作られたものであり、業界自らが立ち上げて制度化したものではありません。

結果として運営事業者の団体にぶら下がるような形でスタートした制度ですが、本来であれば紹介センター事業者が業界団体を作り、団体加盟にあたっての条件や公表する内容とその公表方法についてなども自らで策定すべきものだと思います。

また現在のビジネスモデルでは運営会社からの「紹介手数料」が頼みですから、紹介センターにとっては相談無料の相談者ではなく、手数料を払ってくれる運営事業者が「お客様」になっている側面があります。「お客様」の方を向いて業務にあたることが、前述の「相談者の意向より優先されるもの」の項で述べたようなものの背景になっているような気もします。

とはいえ、適切な相談料や見学同行料を相談者から受領する仕組みはどこか一社が単独で始めるにはハードルが高く、また「見学同行料が用意できない、払いたくないので見学同行はナシで結構です」とか「3件の見学に同行してもらうと費用がかさむから1件だけ同行してもらってあとの二つは自分たちだけで見てきます」といったことになるとマットウな紹介業務ができなくなってしまうことにもなりかねません。難しいところです。

あと、資格制度は整備したいところですね。紹介センター相談員に必要な資質や知識をどれだけ有しているのかを1級/2級と可視化できれば相談者にとっても意味があるでしょう。これは手を付けやすく、業界単独で整備化もできると思います。

紹介センターの認知度や地位向上のため、業界が一丸となってまとまらなくてはいけない時期になっているのではないかと思います。